真空管[メタル･セラミック送信用真空管]物語

真空管[メタル･セラミック送信用真空管]物語　　　　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（第8版；令和4年8月07日）

　送信用真空管を整理するに当たり、2つのカテゴリを設けました。①送信信用真空管として設計製造されたガラス容器の真空管　②送信用真空管として設計製造されたセラミックとメタル容器を使用した真空管　です。従って、受信用真空管を送信用として使用しても、これは、倦くまでも”受信用真空管を送信用に使用した”だけと解釈をしました。また、反射型クライストロンやマグネトロンのような送信用真空管は、それぞれの独立したカテゴリの物語として区分しました。ここでは、[メタル･セラミック送信用真空管]を調査整理しました。

１．四極管

型　名	外　国相当品	冷却方式	陰　極			最　大周波数（MHz）	最大定格				陽極出力（W）	外形寸法
型　名	外　国相当品	冷却方式	線種	電壓（V）	電流（A）	最　大周波数（MHz）	陽極電圧（V）	Ｇ2 電圧（V）	陽極電流（A）	陽極損失（W）	陽極出力（W）	全長（mm）	最大径（mmφ）
7843	RCA	伝導冷却	酸化皮膜	26.5	0.5	2000	1000	250	0.115	100	80	50	28
8281 /4CX-15,000A	Eimac
8321	4CX350A	強制空冷	酸化被膜	6.3	3.2	110	2500	400	0.3	350	385	60	41.5
8560A	ｰ	伝導冷却	酸化皮膜	6.0	2.6	500	2000	400	0.25	＊2	300	62.1	41.4
4F15R	4x150A/ 4CX150A	強制空冷	酸化皮膜	6.0	2.50	500	1250	300	0.25	150	120	59	41.3
4F16R	ｰ	強制空冷	酸化皮膜
4F64	-	伝導冷却	酸化皮膜	6.0	2.8	500	1500	300	0.25	150	235	67	41.5
8904	4CX250FJ	強制空冷	酸化皮膜	?	?	?	?	?	?	?	？	55	41.4
4CX350A	-	強制空冷	酸化皮膜	6.0	2.6	500	1000	400	0.265	350	200	62.1	41.4
8904	4CX250FJ	強制空冷	酸化皮膜	26.5	0.65		2500	400	300	350	250	60	41.2
５Ｆ２０ＲＡ^＊１	7203/ 4CX250B	強制空冷	酸化被膜	6.0	2.6	500	2000	300	0.25	250	250	60.8	41.3
５Ｆ２３Ａ	ｰ	強制空冷	Ｔｈｗ	5.0	14.0	110	4500	600	0.35	400	950	145	59
５F25	7204/ 4CX250F	強制空冷	酸化皮膜	26.5	0.58	500	2000	300	0.25	250	250	50.8	41.3
５F35RA （5F35R)	ｰ	強制空冷	酸化皮膜	6.0	3.1	250	1500	300	0.50	350	340	78.5	50
６F5０RA （６F50R)	４X500A	強制空冷	ThW	5.0	13.5	120	4000	500	0.35	600	730	115	63.5
５Ｆ６０Ｒ		強制空冷		6.0	5.5	1250	？	？	？	？	410	62	60
６F６２R	ｰ	強制空冷	Thw	4.0	35.0	250	3000	500	0.70	600	900	141	74
５Ｆ６４Ｒ	ｰ	強制空冷
７６０９Ｎ	7609	強制空冷	酸化皮膜	26.5	5.57	150	2000	300	0.25	250	370	62.7	41.3
７Ｆ１３Ｒ	ｰ	強制空冷		6.0	46	250	2500	1000	0.38	1500	1350	215	105
７Ｆ３１ＲＡ（７Ｆ３１Ｒ）	ｰ	強制空冷	ThW	6.0	48.0	250	4000	1000	1.5	3000	3200	215	105
７Ｆ３７Ｒ	ｰ	強制空冷	Ｔｈｗ	4.0	35.0	130	4000	600	0.70	1000	12500	125	74
７Ｆ４１Ｒ	ｰ	強制空冷	ThW	6.0	53.0	250	4000	1000	2.0	3000	5000	215	105
７Ｆ４３Ｒ	ｰ	強制空冷		4.0	35.0							125	70.8
７Ｆ６３Ｒ	ｰ	強制空冷	ＴｈＷ	4.0	35.0	250	4500	600	0.70	1000	1600	147	90
７Ｆ６４Ｒ	ｰ	強制空冷
７Ｆ７１Ｒ	ｰ	強制空冷	ThW	4.0	78.0	300	5000	1000	1.5	3500	5000	165	130
7F64R
7T84RB
８Ｆ４５Ｒ	4CX5000A	強制空冷	Thw	7.5	75.0	110	8000	1500	2.0	5000	14000	215	126
８Ｆ６５		蒸発冷却
８Ｆ６６ＲＡ	6166A/ 7007	強制空冷	ThW	5.0	177	220	7500	2000	3.0	12000	10000	285	152
８Ｆ６７	ｰ	蒸発冷却	Ｔｈｗ	6.9～7.5	130	220	8000	1500	4.5	20000	15500	382	170
８Ｆ６７Ｒ	ｰ	強制空冷	ＴｈＷ	6.9～ 7.5	130	220	8000	1500	4.5	15000	15500	290	190
８Ｆ６８	ｰ	蒸発冷却	ＴｈＷ	8.5	185	220	11000	1500	9.0	20000	40000	400	200
8F68R	ｰ	強制空冷	ＴＨｗ	8.5	185	220	10000	1500	8.0	25000	40000	295	240.5
8F71R
H4208	ｰ	強制空冷	THｗ	？	？	？	？	？	？	？	？	75	58

　＊１；　NEC　５F20RAは、同軸型ｾﾗﾐｯｸ封止の最大周波数500MHｚ用電力増幅４極管です。ｶﾞﾗｽ外囲器管の４F15Rをｾﾗﾐｯｸ封止にした真空管で､陽極損失を150Wから250Wに設計変更した真空管で公社の250MHzのﾎﾟｹﾍﾞﾙ送信機に使用されていた。NEC､東芝などが製造　　　　していたが､このNEC ５F20RAは、陽極冷却ﾌｨﾝ外周に“Eimac”、”LGFB０２２３“の刻印があるので､EimacからのOEM製品と思　　　　われます。武相OTﾊﾑｸﾗﾌﾞのJM1MMD､小林満男氏からの寄贈品です。ﾌｨﾗﾒﾝﾄ電圧･電流は､6.0V･2.5A､全長･最大径が､58mm･41mmφです。
　＊２：　Eimac　８５６０Aは、使用するヒートシンクの大きさにより､プレート損失が決定されます。


RCA 7843	Eimac 8321（４CX350A)	*Eimac 8560A1**	Eimac 4X150A

Eimac 4X150G(8172)	Eimac 8904/4CX350FJ	Eimac 8904/4CX250FJ	*Eimac 4CX350A1**

Eimac 8281/4CX-15,000A	Toshiba ４X150A（４F15R)	日立 4F64	NEC 5F20RA

日立 5F60R	NEC 5F60R	Toshiba 6F50RA	Toshiba 6F62R

日立 7F13R	NEC 7F43R	NEC 7F64R	JRC 8F71R

日立 H4208	Toshiba 7T84RB

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　註*1：原田直己氏寄贈品
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　*2：小林満男氏寄贈品　　

２．Eimac 8904/4CX350FJと8904/4CX250FJの不思議

　手元に、Eimac　8904/４CX350FJ　ラジアル　ビーム電力増幅4極管が9本ある。　”Eimac　TECHNICAL DATA 8904/4CX350FJ”の1ペ締めを下記に示す。この真空管は、陽極損失が350 Wのコンパクトなラジアルｰ電力増幅ビーム4極管です。

”Eimac　TECHNICAL DATA 8904/4CX350FJの1ページ目

　　Googleなどの記事の中に屡々”誤り探し”などの記事がありますが、手持ちの9本のEimac　8904/4CX350FJを下記に並べてみました。何か真空管の強制空冷用のフィンの外側の表示に1本だけ何か違和感を感じませんか？参考のため、それぞれえの真空管の製造番号（管理番号）も合わせて標記しました。


Eimac 8904/４CX350FJ 3JLM 0187	Eimac 8904/４CX350FJ ４LGM　1405	Eimac 8904/４CX350FJ ４LJM　1348

Eimac 8904/４CX350FJ ABEM 1306	Eimac 8904/４CX250FJ GBNM 3317	Eimac 8904/４CX350FJ ACBM 1272

Eimac 8904/４CX350FJ 4CXM 1167	Eimac 8904/４CX350FJ DXDM 2120	Eimac 8904/４CX350FJ DXCM 2227

　直ぐに､お解りの通り、中央のEimac　8904/4CX250FJのみが型番違いです。どの様な理由により､このような”摩訶不思議な型番”が世の中に出てきたのかは、今となっては、全く理解ができません。御承知の通り、 ”JAN（Joint Army and Navy 米陸海軍統一規格）ではJAN-8904で同じ真空管です。この”8904/４CX250FJ”と”8904/4CX350FJ"の真空管の末尾の”8904"が、JAN規格ので定められた番号です。事実は小説よりも奇成りと言いますが、今までの収集真空管の中で､此の様にJAN名称が同じで（JAN-8904)で真空管番号が異なるのは初めてのケースです。何方か理由をご存知のかたは、是非ともご一報をください。　念のため、この”摩訶不思議なEimac 8904/４CX350FJと8904/4CX250FJJ ラジアルビーム電力増幅4極管を下記に示します。


Eimac 8904/４CX350FJ と8904/４CX250FJ

因みに、”EIMAC POWER GRID TUIBES,QUICK REFERENCE CATALOG 175.”の99ページに”JEDEC/EIMAC CROSSｰREFFERENCE LIST"がある。下記の通りです。この表による限り、　8904/４CX250FJの記載はありません。最も近い名称は”4CX250FG/8621”がある。

JEDEW/EIMAC CROSS-REFERENCE LIST

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　以上
参考文献
１．伊藤集愑､「真空管外殻用セラミック」、1957年､窯協､ppC339～C345
２．耕山菊郎､「セラミック封着」､1959年､窯業､第67巻第760号､ppC107～C113
３．名和二郎､福浦雄飛､「真空用セラミックシール」､1962年､真空､第5巻第6号､pp215～229
４．西尾信二､「セラミックス材料について」、1971年､真空､第5巻第6号,pp166～177
５．岡本宏章､「管球工業に用いられる封着の技術」､1955年､真空工業､第2巻第6号pp6～12
６．多賀野久､「セラミックスと金属の封着について」､1971年､真空､第10巻第7号､pp251～263
７．高塩治男､「アルカリ･バリウム･シリカガラスとジュメット線との封着」、1975年､窯業協会誌､第83巻第959号､pp315～321
８．高塩治男､「アルカリ･鉛･シリカガラスとジュメット線との封着」、1976年､窯業協会誌､第84巻第972号､pp383～389
９．池田豊､「ガラスと金属の封着の機構」､1964年､窯業協会誌､第72巻第818号､ppC51～C59
１０．岡本宏章､「ガラスと金属の封着温度」、1956年､第7巻,pp189～196
１１．岸井實､「ジュメット線ーガラス封着体中の応力」、1958年､窯業協会誌､第66巻第745巻､pp73～79
１２. 宇佐恒臣､小田原正春､内海宏､「放送用送信管の信頼度」､1973年､日立評論､第55巻第4号､pp355～360
１３．岡本正､「電子管技術の系統化調査」､2007年3月､国立科学博物館の系統化調査報告､Vol.8､pp1～113
１４．中原富士朗､山田徳太郎､「UHF送信管」､昭和36年11月､テレビジョン､第16巻第1號,pp17-22
１５．山田徳太郎､大塚真治､「UHF送信管の使い方」､1962_02_00_gijyutsusya
１６．中田九州男､久田宏､「UHF送信管の諸問題」､昭和36年6月､第43巻第6号,pp792ｰ798
１７．Eimac、「 TECHNICAL DATA＿8904/4CX350FJ_Radial Beam Power Tetorode」
１７．Eimac､「JEDEC/EIMAC CROSSｰREFFERENCE LIST｣､Eimac_power grid tubes 1975_Quick-Reｆferrence Catalogue 175､1975、ｐ９９